エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「まぁ、紗凪ちゃんには紗凪ちゃんの考え方がある訳だし、それはそれでいいん……」

私の問いかけに京極さんが当たり障りのない返答をしようと口を開いたそのとき。

「くだらないな」

「え？」

それを遮るようにポツリと言葉を発したのはそれまで腕組みをしながら私と京極さんのやり取りを見ていた東條さんだった。

「くだらない？」

「あぁ。実に君の考えはくだらないと言ったんだよ」

思わずそう聞き返した私に今度ははっきりと東條さんがそう言って私の方を見た。東條さんから返ってきた言葉に私の顔が歪んでいく。

「それはどういう意味ですか？」

「君も法律事務所で事務員をしているならば当然知っているだろうが、我が国で婚姻を交わす男女の数は年間六十万弱。その一方で離婚の道を辿るカップルの数は年間二十万。つまり三組に一組は別れている、という事になる」

「……」

論理的に淡々と説明し始めた東條さんの姿が私の目に大きく映るようになっていくのは東條さんがこちらへと足を進めて来ているから。

「あぁー、始まっちゃったか」

突如始まった東條さんの独壇場演説もどきに驚いて高速瞬きを繰り返す私の横で京極さんの呆れた声が響いた。
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