エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
延々とこの演説が続く、私の頭の中でグルグルとリピートされる京極さんの言葉。だからあからさまに京極さんはさっき相槌を打ったのだと今更ながらに納得した。

うん。
うん、うん。

京極さんが言っている事は分かった。

東條さんのような理論を捲し立てるようなタイプは、況してや職業が弁護士って言うならば尚更私が、はいはいって流さない限りムキになって己の理論を振りかざしてくるであろうことも想像が出来る。ここは社交辞令と一緒でさらっと流しちゃうのが最良の策だっていうのは分かる。

分かるけれども。

「京極さん、ごめんなさい」

「紗凪ちゃん?」

どうやらこの理論を振りかざす冷徹男に黙って大人な対応ができるほど私は出来た人間ではないらしい。

「さっきから理論ばっかり振りかざしてるけど傷つくのが怖いだけなんでしょ?」

次の瞬間、東條さんに向かってそんな挑発的な言葉を吐いたのはこの私自身だった。
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