エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
一瞬だけ東條さんが顔を顰めたのが分かった。

そりゃ、自分より年下の生意気女にこんな風に挑発的な発言をされたら頭にくるだろう。

「この俺が? 恋愛が怖いだと?」

「ええ。東條さんみたいな理論づくめな人に京極さんみたいな恋愛はゲームとかいう人。真っ正面から向き合えない人がいるからうまくいかない恋愛や結婚が増えていくんじゃないの? 少なくとも私は……」

「君はなんだと言うんだ?」


「私は運命はあると思ってる。そしてひとりの人とちゃんと向き合って一生を添い遂げて見せるから」

「くだらん妄想だな。君は職場で嫌という程その現実を見ているだろう? 本当に君は愚かだな」

「はぁ?」

「少なくとも君との会話で分かった事が一つだけある。君と俺は根本的に考えが違う。普段理論的に考える俺はどんなものにでも0.1%の可能性はあると考えている。だが……」

ギロッと私を睨みつけるような東條さんの視線が痛いくらいに突き刺さる。

「君には断言できる。君とは一生分かり合うことはないだろう。くだらん妄想に生きる君のような女はね」

そんな東條さんの言葉に私の中の理性の糸がブチッと切れる音がした。

「私だってあなたみたいな冷徹マニュアル人間お断りよ!」

「なっ…」

「教えてあげる。そもそも恋愛はね、頭で考えてするもんじゃないんだから!」

お酒が入った勢いか。私を全否定する東條さんに相当、頭に来たのか。

そんな説教じみたこと言ってしまった後に、はっとしたけれども、今更後に引けなくて、精一杯の虚勢を張って東條さんを睨み返す。
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