エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「迷惑なら助けてくれなくても良かったのに。そもそもあんな風に彼氏の振りなんかしなくても。てか私、ちゃんとひとりでも切り抜けられましたよ」

だけど、やはり我慢がならない私は本音をポツリとつぶやいた。それと同時にさっき東條さんに引き寄せられた出来事が頭の中に蘇ってきて、なんだか急に恥ずかしくなって東條さんから目を背けた。心なしか熱を帯びた頰を冷たい夜風が撫でていく。

「見て見ぬ振りをしようと思ったが、一応知り合いの身。後で何かあったと知れば後味が悪い」

「……」

「それにあの場面、あの手の男には彼氏の振りをして毅然とした態度をして追い払う。それが最もスマートな策だと判断したまでだ」

「はいはい、そうでしたか。どうもありがとうございました!」

私って可愛くないな。何はともあれあの場を救ってくれた東條さんにこの太々しい態度。だってやっぱり論理的過ぎてなんか鼻につくというか苦手なんだもの。

「可愛げのない女だな」

「はいはい、どうもすみませんね」

きっと私と東條さんみたいな人は一生分かり合うことなんてないんだろうな。
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