エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
私が働いている法律事務所に東條さんがやって来て来て一週間が過ぎようとしていた。

最近は気がつけばため息をついている事が多い。

「冴草さん、最近ため息ばかりついてますけど何かあったんですか?」

「え?」

昼休み一緒にランチを食べていた後輩事務員が私の顔を覗く。

「ため息をつくと幸せが逃げていっちゃいますよ?」

「そうだね……」

軽く頷いて苦笑いを浮かべた。私だってこんな風になりたくてなっている訳じゃない。全ての元凶はあの男、東條聖なのだ。
「もしかして冴草さん、恋煩いですか?」

「ん?」

「その相手はもしかして東條さんだったりします?」

「な、何言ってるの? そんなの絶対にないよ」

ある訳がない。寧ろその逆。私はあの男が生理的に嫌いなんだってば、なんていう心の声はぐっと飲み込んだ。

あの日の合コン話を後輩にしたら、面白がって根掘り葉掘り聞いてくるに違いないもの。

「否定しても、バレバレですよ」

「え? 何が?」

私は訳が分からず首を傾げた。

「冴草さん、いつも東條さんの事を目で追ってますもん」

周りに聞こえないようにと気遣ってか、そう耳打ちしてきた後輩事務員の言葉は私の動揺を誘った。

「い、いや別に本当に好意があるとかじゃなくて」

「冴草さん、分かりやすくて可愛いです」

その明らかな動揺は勿論、私を揶揄う後輩事務員にも伝わってしまっていた。

「ただの人間観察だから。この人はどんな人か分かった方が一緒に仕事をしていく上でやりやすいと思って行動を観察してただけなの」

「ふーん。そうなんですか」

明らかに私の言うことを信じていないだろう後輩事務員が悪戯に笑った。
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