エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
父の電話の話が気になって気になって仕事にも身が入らなかった。

大事な話って何だろう?

まさか両親のどちらかが病気で余命幾ばくもないとか? はたまた離婚しますとか?

不安な気持ちが膨らんで良からぬ妄想が膨らんでいく。

東京の自宅を出発して二時間あまり。懐かしい風景が目に飛び込んで来た。地元へと帰って来たのは約二年ぶりになるだろうか。

東京の忙しさや殺伐とした雰囲気とは対照的なゆったりとのどかな田園風景が目の前に広がる。普段見慣れた高いビルがないから空の青さがやけに目に付いた。

「おかえり」

「ただいま……」

駅まで迎えに来ていた母親と落ち合って車に乗り込んだ。

「紗凪、少し痩せた? ちゃんと食べてるの?」

「食べてるよ。それより大事な話ってなに?」

「それはお父さんが酒蔵から帰って来てから話すからお母さんからは話せないわ」

「もったいぶらないでよ! 気になって仕事も手に付かなかったんだから」

このモヤモヤから解放されたいという欲求が苛立ちとなって思わず、言葉に現れる。

「ごめんなさいね、紗凪」

バックミラー越しに見える母の表情はどこか悲しげで緊張しているようにも見えた。そんな母親を見て私はそれ以上突っ込む事が出来なくて当たり障りのない話をしてその場を凌いだ。
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