エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
大好きなモンブランでさえ緊張のせいか喉を通らないし美味しいって思えないそんな状況。

モンブランの甘さがやけに喉奥を刺激してそれを緩和するために咄嗟に紅茶をゴクリと飲んだそのときだった。

「紗凪、急で申し訳ないが……お前に見合い話があるんだ。明日、そのお相手と会ってもらいたい」

「ゴホッ、ゴホッ!」

予想だにしなかった父の言葉に驚いて思わず噎せ返った。

今、何て言った?
み、見合い話?
しかも明日?

これは夢ってやつなのだろうか? 頭と心が混乱して現実を受け入れられない私がそこにいる。

むせ返る私の背中を母が心配そうに摩る。

「わ、私の意思は? そもそも何でいきなり見合い話が持ち上がってるの? 私、お見合いなんて絶対にしないから!」

そう言って勢いよく立ち上がった。

「そう言うと思ったが、実は代々受け継いで来た造り酒屋の経営が厳しいんだ。業績が悪化してこのままだと酒屋をたたまなくてはいけないんだ。そうすれば私たちだけじゃなく従業員やその家族も路頭に迷う事になる」

「え?」

本日、二度目の衝撃を喰らった私は呆然とその場に立ち尽くす。実家の家業がそんな風になっていたなんて思いもしなかった。
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