エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
両親から有り得ない提案を聞いて数時間が経った。これが夢ならばいいのにと思っても現実は変わらない。私の気持ちとは裏腹に一定のリズムを刻む時計の針の秒針の音がやけに耳に響く。

私は二階の自分の部屋に篭りベッドの上に寝転がりながら、まだ収まらない心音と感情を落ち着かせようと必死で、思わず盛大なため息をついたそのとき。

ーーープルルルル

鞄の中から響いた携帯の着信音。なかなか鳴り止まないその着信音に私は気だるい身体を起こして鞄の中を漁った。

「もしもし?」

『ちょっと紗凪! さっきから連絡してるのに全然応答がないから心配したじゃない。大事な話ってなんだったの?』

電話は凛華からだった。実家に帰る前に凛華には今日の事を話しておいたのだ。私を心配して連絡をくれたのだろう。

「……私、政略結婚させられそうなの」

『えーー!』

思いもよらなかったであろう私のカミングアウトに凛華の絶叫が響いた。
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