エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「提案なんだが、君の事は“紗凪”と呼んでいいか?弟と妹はこれが政略結婚だとは知らないから“君”と呼ぶのはどこよそよそしいと思ってね」

「あ、そうなんですね。紗凪と呼んでもらって構わないです。じゃあ、私は……聖さんと呼べば良いですかね?」

「あぁ、紗凪に任せるよ」

「じゃあ聖……さんと呼びますね?」

聖さんと呼ぶのが恥ずかしくて抵抗がある私とは対照的にサラリと私の名前を呼んだ東條さん。
私とは違ってまったく抵抗がないらしい。小心者の私とは大違いだ、なんて思いながら朝食を食べ続けた。

「これ母から君にプレゼントだそうだ。今日はこれを着て行くといい」

「え?」

朝食を食べ終え食器を片付けていた最中に聖さんがリビングにある棚から取り出したのはハイブランドの紙袋だった。水気が付いた手をタオルで拭き取り、聖さんから紙袋を受け取った。

「開けてみてくれないか」

「あ、はい……」

聖さんに促され私はそっと中の箱を取り出して開けてみた。

「これって……」

「母が結婚祝いに紗凪に着てほしいと」

箱の中にあったのはネイビーのシックなAラインワンピースで身頃はサテン生地で袖のところがレース生地になっている上品なワンピースだ。

「こんな高価な物を申し訳なくて頂けないです!」

「いいんだ。これは母の気持ちだから快く受け取ってくれ。紗凪が着てくれたら母はそれで喜ぶから。さぁ、後は俺が片付けて置くから紗凪は洗面所に行って準備して着替えてくるといい」

「……じゃあお言葉に甘えて行ってきます」

素直に聖さんの言葉に甘えることにした。
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