エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「うちの父、扱いにくいでしょう? 一見、優しそうに見えるけど中身は堅物で人の言うことを聞かないから母さんも苦労しているみたいです。まぁ、僕もですけどね」

「……」

何と言葉を返すのが正解なのだろう。肯定すればそれは悪口になるし、否定したらしたで悠斗さんに反発する形になる。正直、返す言葉が見つからない。

「ねぇ、紗凪さん? 引き返すなら今のうちですよ?」

「引き返すとはどういう意味ですか?」

「聖兄さんと別れて東條家を去るという意味ですよ」
「え?」

思いもよらない悠斗さんの発言を聞いて私の顔は引きつっていく。

「君みたいな子があの聖兄さんをどうやってたぶらかしたんですか?」

「……っ⁉︎」

さっきまでの柔らかい雰囲気は影を潜め、そこにいるのはゾッとするくらいに冷酷な笑みを浮かべる悠斗さんで、怖いと思うその感情が私を後退りさせる。

「ついでなので宣言しておきますね? 僕はあなたを東條家の一員とは認めませんか……」

「はい、そこまで!」

冷酷な笑みを浮かべながら私にそう宣言しようとした悠斗さんの言葉を遮ったのはーー
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