エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
首元を伝う金属のひんやりとした感覚以上にネックレスをつけようとしてくれている聖さんの手が私の首に触れる度に身体が過敏に反応してしまいそうになる。

「できたぞ」

数秒後、ネックレスを私の首につけ終わった聖さんがそう言って後ろから私の顔を覗いた。そのあまりに近すぎる距離に動揺して私の顔は真っ赤に染まっていく。

「ほら、紗凪も確認してみるといい」

「あ、えっと……はい」

聖さんが私を鏡の前へと促した。

「どんな洋服にも合わせやすそうで、すごく気に入りました。本当にありがとうございます」

「それなら良かった」

部屋のダウンライトの暖かい光に反射してキラキラと胸元で光るネックレス。嬉しさで自然と頰が緩んでいく。まさか聖さんからこんな嬉しいサプライズがあるとは思っていなかった。

聖さんのことを冷徹で理論的だと思っていたが、こうやって向き合う度に新しい発見と意外性があって、どんどん聖さんへの印象が変わっていく。

そういえば初めて会った日も京極さんが言っていた、『なんだかんだで聖はお人好しだよね』という言葉。きっと聖さんはよく目が届く気遣いのできる人なんだろうと思う。

「じゃあ、ダイニングに戻って影山からもらったタルトを食べようか?」

「そうですね、そうしましょう」

ダイニングに戻り、タルトを食べながら談笑した。もうじき私たちの結婚記念日が終わろうとしている。淡白で苦い思い出になろうとしていたその日が影山さんや聖さんのサプライズによって嬉しく温かなものへと変わっていた。

そして思った。程度は違うだろうけれども普通に恋愛結婚した人たちはこういう気持ちになるのかもしれないと。おそらくそれに似た感情が私の胸の中に静かにほんのりと広がっていた。
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