愛する妻を口説く方法

「………さんっ、倉田さんっ!!」

名前を呼ぶ声に、はっとする。
俺が指導係をしている後輩が資料を持って立っていた。
「あぁ。すまない。」
「これ、資料です。確認をお願いします。
倉田さんがぼんやりしてるなんて珍しいですね。」
「ちょっとな。」

まずい。仕事中にぼんやりしてた。
美海の言葉が頭から離れない。思っていた以上にショックだったらしい。

「お前、今日どうした?」
同期の田中に声をかけられる。
「どうせ美海ちゃん絡みだろ。」
言い当てられた……。
田中も高校の同級生で、就職して再会した。
つまりは、美海のことも知ってるわけで。
ごまかしても無駄だろうと判断する。
「あぁ。」
「話聞いてやるよ。今日いけるか?」

内容が内容だけに、一瞬戸惑う。
でも、俺一人で悶々と悩むより、聞いてもらった方がいいかもしれない。

「たぶん。」
「仕事終わったら連絡くれ。」
「OK」

軽い約束をして仕事に戻る。
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