ユリの花はあまり好きじゃない
 暗がりの中でもわかるほど、シンちゃんの顔が楽し気に輝いていた。触れた髪はまだ少しだけ濡れている。

「ねえ、百合」

「ん?」

「俺さ、4月からちゃんと働くよ。今日ハロワに行ったら、結構求人あったんだ」

 無言で首を巡らせると、シンちゃんが「んー」と伸びをした。

「今まで苦労ばっかかけてごめんね。俺、今度こそちゃんと働いて、百合はアクセサリーだけ専念できるように頑張るよ」

 シンちゃんが言い終える前に、嗚咽が口から溢れた。

「どうしたんだよ」

 シンちゃんが上半身を起こして、私を見下ろす。

 ううん、と首を横に振る私を見て、勘違いしたらしい。

 泣くほど、私が喜んでいるのだと。

 ごめん。シンちゃん。ごめんなさい。

 何度も何度も胸の中で呟いた。

 何度も何度も。
 数え切れないほど、何度も。
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