ユリの花はあまり好きじゃない
「俺、百合がそんなに悩んでるって思わなかった。最近までうまくいってるって思い込んでたから、何も気付かなくてごめん。でも俺、仕事決まったよ」

「うん」

「車の部品を扱ってる工場なんだ。来週から行くようになってる」

「うん」

「俺、頑張るよ」

「うん」

 何を言っても「うん」しか言わない私にシンちゃんの声が止まった。

「百合」

 無言のまま、続きを待っていた。
 けれどシンちゃんは言い淀んでいるのか、再び重たい沈黙が訪れた。

 しばらくお互いに口を閉ざしていると、

「―――俺がいい子になれば百合は戻って来てくれるんだよね?」
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