綺麗なブルーを描けません
とにかく、この場所を離れながら、カバンから取り出したポケットティッシュを、袋を剝いて柊くんに渡した。

「ありがと」

腕の代わりに額に押し付ける。

血まみれ…

柚葉さんが自分の上着を脱いで、惨状にしか見えない柊くんの服を、覆ってあげる。

心配そうに、柊くんを伺いながら。

…何か…

柊くん、このヒトの弟だったら、よかったのにな。


そおしたら、普通に幸せだったのに。
心の底から、そう、思った。

「…血、止まったかも」

柊くんがつぶやいて、ティッシュの束を額から除けると、柚葉さんは覗き込んで、

「1㎝くらい切ってる。病院…」


「行かない。大丈夫」

「でも、傷が…」

柊くんがクスっと笑った。

「残らないと思います。それに、このくらい残ったところで大したことないです。…江間さんだったら、心配してあげないといけないけど」

柚葉さんハッとして、あたしを見た。


うん。

うすうす気づいてたけど、

柚葉さん、本気であたしのこと、忘れてたよね。

柊くんがクスクス笑ってる。


< 113 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop