綺麗なブルーを描けません
柊くんが部屋から出て行って、ドアが閉まる音がして、

柚葉さんは、あたしの前に自分もしゃがみ込む。

「とりあえず、送っていくよ」

ハッとする。

そうか、とりあえず、帰らないといけないんだな。

それに気が付くと、ものすごく寂しくなった。

「…そうか、帰らなきゃなんだね」

柚葉さんが手を差し出してくれたので、その手を取る。

大丈夫って、独りで立ち上がれる自信がなかった。

「うん。エマの寝られるとこないからね」

そうか、そうだよな。

かなり力強く力を借りて、立ち上がる。

もう一度、部屋の中を見回しながら、玄関へ移動する。

カッコいい部屋だなあ。

自分がここに住むなんて、想像しづらい。

靴を履いて、ドアに手を伸ばす。

と、後から来た柚葉さんに、それを、邪魔される。

サッて伸ばした指先に手をさらわれて。

さらわれた右手の先を見る。

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