綺麗なブルーを描けません
柊くんも、へたり込む。

「いや…あんな人ではないから」

「…知らないからさ。…でも、どうしようかと思った。会社にここの住所聞いて来たらしいよ。帰ってきた瞬間、出くわして。…隣に住んでるだけなんだけど、いろいろ疑われそうになって」

みんなは、完全にほっとしてるみたいだけど、あたしは、実はとても打ちのめされている。

…知られてしまった。

あたしの生きている場所。

おまけに大事な人たちも見られてしまった。

…ちょっと待って、兄に知られたってことは、あの人に知られてしまうのは時間の問題で。

あの人に知られてしまったら…、いろいろ、全部ぶち壊される。

あたしは、身体中から血の気が引いていくのを感じていた。

凄く幸せな気持ちでここにたどり着いた自分を、踏みつぶして隠してしまいたい。

何で、忘れてたんだろう。

あたしは普通なことしちゃいけないのに。

パニックに陥る。

いろいろなことが、すっと醒めて言って

「ごめん、柚葉さん…」

「え?」

こっちを見た、柚葉さん。

「ごめん。やっぱり、柚葉さんのことは諦める」

自分の頭が真っ白になる。

「もう、いいから」

言って、自分の部屋に逃げた。
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