綺麗なブルーを描けません
お店じゃ、大きな声すら出せないもんね。

柊くんは、ベンチを見つけ、あたしに『座れ』と指さす。

あたしは、すとんと、腰掛ける。

「…オレが、何を怒ってるのかは分かってると思う」

「…柚葉さんのこと」

「そう。…何で?急にお兄さんが現われたからって、どうしてそうなるんだ?」

あたしは、目の前に立っている、柊くんを、見上げる。

「言えない」

柊くんの中で、怒りがさらに火を噴くのが見える。

けれど、彼はちょっと目を伏せて、怒りをねじ伏せる。

「…オレが部外者なのは分かってる。けど、オレ、柚葉さん、好きなんだよ」

「…さすが、ひとたらし」

「え?」

「いえ」

「…江間さんの味方になれる気はしない。…オレは、江間さんの部屋のドアけ破ってでも、撤回させたかった。…で
も、柚葉さんに静かに止められて」

心が痛んだ。

分かりやすく、ズキッって音が聞こえるくらい。

< 151 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop