綺麗なブルーを描けません
既婚者のままとはいえ、ちょっと自由になった柊くんと、一緒に働ける楽しみを、あっさり手放せるのだろうか。

「あ、考えたな」

黙ってると、言われた。

「…って、考えるよな。…いじめる気はないんだ。…オレ、ついてってもいいけど」

「えええっ!?」

「起業した友達に、自分の会社で働けって誘われてるんだ。でも、面白そうって言う以外、メリットなくて、渋ってたんだけど」

「でっ、でも、それではあまりに悪すぎる」

「そうだよな。彼女ですらないのに」

言って、二マッって、笑う。

「でも、いいじゃん。この年で長年勤めた会社をやめるのはそれなりにリスクだから、責任とってもらうし」

「…何にも取れないよ」

「向こうでさ、頑張るんだよ。もう、定住。戻らないといけないんだったら、今度はエマが会社やめて、向こうにとどまるんだ。…柊が帰っても、追っかけるのなしだから」

うっすら笑みの、柚葉さんの、気持ちが読めない。

「それ、柚葉さんに、何のメリットもないです」
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