綺麗なブルーを描けません
昼休みに、休憩室で突っ伏して鬱っていると、

「どうしたの?引っ越しの準備進まないの?」

通りかかかった柊くんに、声をかけられた。

あたしは、身を起こして、柊くんを見上げる。

引っ越しにはさほど時間はかからない。

荷物なんかほとんどない。

でも、

「親に説明するのが億劫なんだよ」

柊くんは、口をへの字に曲げる。

「ちゃんと、説明しなね。…って、言うのが通用するおうちの子になら言うんだけど。…説明なんか要らないんじゃない?引っ越してから、会社の都合で引っ越しましたって報告すれば」

あたしの、歪んでる理由を知ってる柊くんは、常識的な言葉は吐かずに、非常識で、あたしの欲しい言葉をくれた。

柊くんは、あたしの歪んだ人生の先に、光を持って現れてくれた人でもある。

あたしのことを少し、生きやすくしてくれた恩人なんだ。

…このヒトがいるんだから…柚葉さんまで一緒に来てくれるんだから、嫌いな人のことまで考えなくていいや。
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