綺麗なブルーを描けません
どうしよう。

無性に柚葉さんに会いたくなった。

おまけに、電話が切られるときに、ガリッと、心をかきむしられて、そこがヒリヒリする。

「うわー。露骨に寂しそうな顔されちゃってる。…独りじゃなかっただけ、マシだと思ってもらえないかな」

あたしは頷く。

「…急に、仲良くなったんだね。オレ、こっち来る前に、江間さんの護衛押し付けられたよ。今も、しっかり傍にいるのか確認されてた。さっさと自分がくればいいんだよ。…でも、よく来てくれることになったね」

「うん。でも、そのかわり、もう帰らない。会社からもう戻っていいって言われたら、辞めないといけない」

「…そうか。でも、戻りたくないよな」

柊くんも、しみじみという。

「あたしは解放されたけどね。家族があたしがいないことに気付くのに、何年かかるか。…一生気付かないかもしれないし。でも、窮屈さがなくなった気がするよ」

自分の話もしてくれるかもしれないと思って、言ってみる。

と、ちょっと引っかかってくれた。

「…家に帰らなくていいっていうのは、本当に幸せだね。…オレは、実家から逃げたかったのに、また、帰りたくない家を作り出してしまったから。もう、ずっと独りでいたいかも」

「…」
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