綺麗なブルーを描けません
実家の話は初めて聞いたな。

あたしの気持ちがわかるのは、自分も家族に恵まれなかったからなんだな。

思ったけど、そこは触れないでおく。

いま、うっかり喋ってしまっていることにも、気付いてほしくないくらい。

「江間さんの家と似てるかな。だから、他人事とは思えなかった。オレは、なんか、ふてぶてしかったから、

どんな状況だろうとむりやり真っすぐ育ってやったけど。すくなくとも、江間さんみたく、自分を責めて、他人に触れることもできなくなるほど酷い症状は出なかった。でも、どうなんだろう。本当は物凄く歪んでるのかも」

ここにも、いたのかも。

真っすぐに、落ち込めない人。

結局、自分が悪いんだって。思いつめる方向に思考が働く癖。小さいころからねじ込まれた習性。

そのうえ、このヒトは、人に相談なんかしなくて、突き進んでしまう。

良いほうに突き進んでいるときはいいんだけど、きっと悪い方向にでもまっしぐらに進んでいく。

いいのか悪いのか分からないけど、結婚した時もそうだった。

結婚しましたって報告をされるまで何にも知らなかった。

「…ねえ、柊くん、一個、約束してもらえない?」

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