綺麗なブルーを描けません
「やっぱり、いい人なんだね」

「江間さんが、面白いから」

「面白がられてるんだ」

「興味深いって意味で面白いんだよ」

あたしは、一杯目のビールを飲み干してしまう。

カウンターに座って、飲んでいる今の状況も、悪くない。

やっと、少しそう思えてきた。

柊くんのような、見た目も中身もいい男な男の子と、飲んでるんだから。

「まだ飲む?ビール?...もうちょっとかわいいもの、飲む?」

「かわいいものって...いや、ビールがいいな」

「オレにカッコつけても仕方ないもんな」

そうなのです。

いろいろ、バレてるから、何を繕っても、遅いっていうか。

さすがにアルコールが回ってきた。

急速に、柊くんの存在の有り難さが染みいってくる。

そして、申し訳なくなる。

柊くんには、なんのメリットもないんだよな。

面白いからいいよ。って言ってくれるんだろうけど、本当は家に帰りたいだろうし、何ならかわいいお姉ちゃんと飲みたいハズだ。

「ごめんね、柊くん」

「え?オレがここにいること、もしかして、申し訳ないとか思ってる?」

説明が要らないのはいいけど、思考のクセを知りつくされてるっていうのは、何だか面白くないな。

「思ってます」

「嫌だったら来ないから。それに、もっと若くてかわいい友達と飲んだ方がいいんじゃないかとか思ってそうだけど、だったら、さすがに、お許しでないから。何か、江間さんだけ、特別枠らしいよ。江間さんとなら一緒に飲みいってもいいみたい...なんでかわからないけど」

あたしのことをどういう風に説明してるのか、訊きたくなるな。

「だから、ご心配なく。オレにとっては息抜きだから」

言って、ちょっとしまったなって表情になる。

うん?って思ってしまう。

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