センパイの嘘つき
「出てこないと…」
先輩は突然立ち上がって、一歩足を前に出す。
「近づくよ?」
「こっ、こないで!」
私は少しだけ震えている手をぎゅっと握り締める。
「柚月ちゃん。おいで」
そっと先輩の目を見ると、すごく優しい色をしていて。
気づいたら私はカーテンの外に出ていた。
「えらいえらい、よくできました」
「子ども扱いしないでください!」
先輩はフッ、と笑うと「ほら」と言って何かを投げた。
私は手を伸ばして、なんとかそれをキャッチする。
手の中には、黄色いパッケージの飴がちょこんとのっている。
じっと見ていたからか、先輩はおかしそうに笑って、「毒は入ってないよ」と言って自分も飴を1つ食べた。
私は袋を開けて小さな黄色いかたまりを口に放り込む。
入れた瞬間、甘酸っぱいはちみつレモンの味が口いっぱいに広がる。
「…おいし」
「それはよかった」