センパイの嘘つき
「あ、今日はあるね、じゃあ後で」
女性専用車があるときは、先輩は私を乗せて、学校の最寄駅でまた待ち合わせする。
ないときは、私に触れないように、でも守るようにそばにいてくれる。
「…また」
下駄箱を開けると、今日もそこに上靴はなかった。
陰湿ないじめは終わらない。犯人を探そうにも絞り切れる量じゃないことはわかっている。
「柚月ちゃん?どうかした?」
私は慌てて下駄箱を閉め、笑顔を作る。
「なんでもないです!私、用事思い出したんで先に行っててください」
「柚月ちゃん!?」
心配そうな先輩から逃げるように私は背を向けた。