センパイの嘘つき


教室に入ると、音がするかと思うくらい全員がこちらを振り向いた。


慣れない視線に、体が固まる。


なに?なにごと?


「柚月!」


その沈黙を破るように咲が駆け寄ってきて、抱きついてくる。


「咲…?」


「ごめん、私が先に行ったから…」


ああ、そういうことか。


涙目で自分を責める咲の頭を軽く叩く。


「バカ、私が先行っててって言ったんでしょ。咲のせいじゃないよ。それに、私なら大丈夫」


「柚月!!!!」


半泣きの咲の背中をポンポン、と優しく撫でる。


心配かけてごめんね。


「かたきは柳先輩がとってくれたみたいだしね!」


さすがイケメン完璧彼氏!


そう言ってはしゃぐ咲をまじまじと見つめる。


「…今なんて言った?」

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