センパイの嘘つき


私の不安は消えないまま、時間だけが過ぎていった。


初めは気のせいだと思った。たまたまだと思った。


頬の引っ掻き傷も、絆創膏の貼られた手も。


不安そうな顔をする私に、先輩は大丈夫だからと言って笑った。


私は、先輩の笑顔が、怖かった。


私の脳裏に、“彼”の背中が蘇る。


先輩の笑顔と、“彼”の笑顔が、重なる。

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