センパイの嘘つき


「先輩っ!」


私は叫んで思い切り先輩を足で蹴り飛ばす。


先輩は、軽くよろめいて、腕が解放された。


私は両腕で自分の体を抱きしめる。震えが、止まらない。


「…先輩、なんで?」


先輩の顔を見て、私は驚く。


先輩は驚いたように目を見開いて、間が抜けたような顔で私をぼんやり見つめていた。


…先輩の手は震えていた。


「…先輩?」


「…ごめん」


そういう先輩の声は震えていて、でもどこか優しさが滲んでいて。


さっきまでの薄っぺらい声とは違う。


何が起きてるの?


私はそっと先輩の手に触れようとする。


「触らないで!」


強い声でそう言われて、私は慌てて手を引っ込める。


…先輩、何に怯えているの?


「…先輩、私」


話したいことがあるんです。


そう言おうとした私の声は、遮られた。

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