センパイの嘘つき


「あれ、悠人のカノジョじゃん」


冷たい目に見つめられ、私は出そうとした声をひっこめる。


「んー?ああ、もう彼女じゃないから」


先輩は、ちらっと私を見て、興味なさげにそう言う。


「えーまじ?捨てられちゃったんだ〜」


キャハハハ、と甲高い笑い声が耳に刺さる。


「…やめて」


「えー?なに?」


「これ以上先輩を利用しないで!傷つけないでよ!」


もう、先輩の優しさにつけこまないで。


「…はぁー?なに言ってんのこの子」


バカにしたように、呆れたように、女の先輩たちは笑う。


「あのさ、なにをどう勘違いしてるのか知らないけど、私たち誘われたの、悠人に」


心臓が、痛い。


そんな…なんで?


「…お前ら先行ってて」


「えー、でもさぁ…」


「いいから」


柳先輩の強い口調に、女の先輩たちはしぶしぶその場を離れる。


「…お前さ、なんなの?もう別れただろ?」


ぶっきらぼうな口調。…こんな先輩、初めて見た。


「っ…先輩は、女の子のこと適当にたぶらかして遊ぶような人じゃない!そうでしょ?」


「…アンタ、俺にさっきなにされたか分かってる?理想ぶち壊しちゃって申し訳ないけど、俺は所詮そういうやつだから」


じゃ。


そう言って背を向けた先輩のカバンを掴む。


「っおい!」


「なんで!?こんなことしても、傷つくだけじゃん!そんなの、もう分かってるんでしょ!?」


私たちの横を通る人たちが、チラチラとこちらを見る。でも、そんなのどうだっていい。

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