センパイの嘘つき


「もう柚月!話聞いてた?」


私の目の前に手をかざして語りかけてくる咲。


私はハッとして、笑顔を作る。


「ごめんごめん、えっと…」


「いいよ、無理に笑わなくて」


「…ごめん」


咲の顔は、ただただ心配そうで、申し訳なかった。


「もう最近ずっと心ここに在らずって感じだけど。…柳先輩と話してないの?」


「…うん、もう1週間くらいかな。学校にも来たり来なかったりだし」


それに、多分嫌がられる。


声をかけようとしたり、待ち伏せをしてみたりしてはいるものの、全て玉砕だ。


「…もう、やめたら?」


「…うーん」


「酷いことされたんでしょ?私だったら、許さないよ」


「…ありがと、怒ってくれて」


咲は、私のことを心配してくれて、私のために怒ってくれる。


そんな大切な友達の言うことなのに、それでも私は柳先輩を好きなことをやめられない。


「…先輩、苦しんでないかな」


「はぁー?苦しんでるのはアンタでしょ!」


お人好し!、そう咲が言って、ちょうどチャイムが鳴る。


そんなことないよ。


先輩は、苦しんでる。

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