センパイの嘘つき


出て行こうとする先輩の腕をとっさに掴んだ。


「先輩、待っ…」


掴んだ、手首の、その先。


サッカーボールで、じゃない。知らない、青アザ。


私は息を呑む。


先輩の顔にできてた傷。


もう、ないのかと思ってた。


「…なんで!?」


先輩は、私の腕を振り払う。


「…喧嘩した。そんときできた」


嘘だ。


先輩、見たことないくらい動揺してる。


「先輩、なんで…」


「お前には、関係ない」


先輩は拒絶するように私から距離を取る。


「だからもう、近づくな」


…じゃあなんでそんなに苦しそうな顔するの?

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