センパイの嘘つき


俺の苦しい日々は再び始まった。


何度も叩かれる、殴られる、蹴られる。なんで、なんでと罵られる。でも最後には泣いて抱きしめるんだ。ごめんね、と何度も言いながら。


俺は耐えた。朝がくれば、柚月ちゃんに会える。君に笑ってて欲しくて、何度も嘘ついて、笑って。


でも、体が限界を迎えた。


いつからだろう。俺の中に、もう一人の「俺」が生まれた。


乱暴で、投げやりで、自分の中の黒い塊を吐き出すように人を傷つけた。柚月ちゃんのことも、たくさん傷つけた。


最初は気づかないくらい僅かな時間だった。でも、それがどんどん増えて、コントロールができなくなった。


だから君に別れよう、なんて言った。心にもないことを言った。このままだと、君を壊してしまう。それだけは、嫌だったから。


今となっては、もうどっちが本当の自分か分からない。きっともうすぐ俺は飲み込まれる。いなくなってしまう。そんな予感がする。


だから、その前に書かなきゃいけないと思った。柚月ちゃんに伝えなきゃいけないと思った。

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