センパイの嘘つき
「先輩!」
先輩の元に駆け寄る。
頭をそっと膝の上にのせる。
手にヌルッとした感触があって、それが血だとすぐにわかる。
「…柚月ちゃん?」
「っバカ!先輩の大バカ野郎!」
感情のネジが飛んで、わけもわからず涙が溢れる。
先輩の血が、私の涙でにじむ。
「何今更かっこつけてんの!?先輩がダサいのなんて、もう知ってるよ!そうやっていっつも取り繕って、心隠して、作り笑いして!本当にバカ!バカ!」
「…ん、ごめん」
「…っ嘘つき…大切にするって言ったじゃん、好きって、言ったじゃん」
赤で染まった金髪を、抱きしめる。
「話したいことがあるって、言ったじゃん…なのに、いなくなるなんて駄目だよ」
ゴッ、と鈍い音がして、頭に衝撃が走る。
一瞬目の前が真っ暗になって、何が起きたのかわからない。
先輩が私を呼ぶ声が、遠くに聞こえる。
鳩尾に何かがめり込んで、一瞬で意識が戻される。
私の体はあっけなく飛ばされ、壁に背中が打ち付けられる。
胃から何かがせり上がってくる。嗚咽と共に、口から胃液が吐き出る。