センパイの嘘つき
愛してる
頭に鈍い痛みを感じて、視界が明るくなる。
鼻をすする音、小さな話し声。それがだんだん近くなって、瞼が痙攣するように動き始める。
重いそれを、ゆっくりと開けると、より強い光が差し込んで思わず閉じる。
柚月、と声が聞こえて、ああ、それが私の名前か、なんてバカみたいなことを思う。
再びゆっくりと目を開ける。広がった視界に、はっきりとしないけれど人がいることがわかった。
「柚月!柚月!」
「お姉ちゃん、柚月がびっくりするから」
目の焦点が合う。泣いているお母さん、目を赤くして安堵の表情を浮かべる里美ちゃん、憔悴した顔のお父さん。
声を出したいのに、うまく出てこない。
ここ、どこだっけ、私はなんで…
_________柚月ちゃん