センパイの嘘つき
耳に蘇った声と同時に、頭の中でたくさんの光景がフラッシュバックする。
そうだ、私は。先輩を…
血だらけの先輩、斬新に感じた痛み、恐怖。
思い出しただけで震えが止まらなくなる。
「今先生を呼んでくるわ」
よろけるお母さんをお父さんが支えて、病室を出て行く。
それを追おうとした里美ちゃんの腕を、なんとかして掴む。
「…柚月?」
「…せんぱい、は?」
それが精一杯だった。思い出すだけで、私の中の気持ちが溢れてくる。
「…無事よ、柚月が警察と救急車をよんだから、あの母親もきっと…」
私は里美ちゃんの腕をぎゅっと握る。
里美ちゃんは知ってたんじゃないかな、先輩のこと。
何かを抱えてるって、勘付いてたんじゃないのかな。
だから、支え合ってって言ったんだよね?私たちなら、お互いの傷を癒せるって、そう思ったんだよね?
「…あいたい」
私の言葉に、里美ちゃんは目を見開く。