センパイの嘘つき
もう、早く言ってしまいたい。
「ゆ…」
声が、震える。
「ゆう…と…」
私は目をぎゅっとつぶる。
なんで、こんな。
こんな恥ずかしい思い…
なにも言わない先輩に不安になり、私はそっと目を開く。
「…先輩?」
「ごめん、今ちょっと見ないで」
先輩は、少し顔を赤くして、それを隠すように手の甲を口元に置いている。
気まずい沈黙が流れる。
「…自分で言っといてあれだけど」
先輩の逸らされていた目が私を見る。
「名前呼ばれただけなのに、なんか、やばいね」
ああ、もう、なんで?
心臓がドキドキうるさい。