センパイの嘘つき
「それかえして!」
「あっ、ごめんね」
私は差し出されて小さな掌の上にそれを置く。
「こっちきて!」
ものすごい力で腕を引っ張られ、思わず転びそうになる。
子供は何事にも全力だから、力の加減を知らない。
「たっくん!おんなのひとにはやさしくしろっておにーちゃんがいってたろ!」
もう一人の男の子がそう言って、私とたっくんのあいだに割り込んだ。
「ふふ、ありがとう、でも大丈夫だよ」
その子の手にもお手玉が3つ握られていた。
「お手玉、はやってるの?」
「おにーちゃんがね、3つをこーやってまわしてたの!」
そう言ってたっくんと呼ばれてた男の子はお手玉を宙に投げるが、うまくいかずに全て落ちてしまう。
「3つは難しいね、お兄さんすごいね」
「うん、おにーちゃんはかっこいいんだ!これもくれたんだよ!」
そう言ってポケットから出したものを、私に見せてくれる。
小さな手に乗ったそれを見て、私の心臓がどきりと鳴った。
「…これ、お兄ちゃんがくれたの?」
見覚えのある飴。私のために持ち歩いてる、なんて、嘘か本当かわからないこと言って。
「うん!かっこいいんだあ!」
「…そのお兄ちゃんって、髪の毛金色?」
ぎゅっと、手を握りしめる。
「おねーちゃん、おにーちゃんのこと知ってるの?」
きょとん、とする男の子に、必死に詰め寄る。
「そのお兄ちゃん、どこにいるか分かる!?」
「えっ…わ、わかんない」
困惑するたっくんの横で、もう一人の子が「おれわかる!」と声をあげた。
「おにーちゃんいってた!」