センパイの嘘つき


知ってる後ろ姿。目に眩しい金髪。全部、なにもかも、変わってない。


大好きなあなたがいる。


「あーあ、ばれちゃった」


なにを考えているかわからない顔で、先輩は振り向いた。


私は走る。久しぶりで足がもつれても、それでも早く先輩のところに行きたい。


「ストップ」


あと少しのところで、先輩は手を突き出した。


…それは、拒絶で。


「…なんで?」


「俺は、君の求めてる先輩じゃないから」


首元が、疼いた気がした。


「手紙、読んだんだよね?だから、あの日お前は来た。だったら分かるだろ?母親がいなくなった今、もうアイツは出てこない。『俺』が誰かの傷を受ける必要は、もうない」


冷たい目。まるで、何かに怯えているみたいに。


私は止めていた足を踏み出す。


「…会いたかった」


そっと、先輩の指に触れる。変わらない、感触。大きな手、細くて長い指。


「…お前さ、話聞いてた?俺は、お前が望んでる…」


「先輩です。どっちとかない。先輩は、先輩だよ」


ぎゅっと手を握りしめる。怖いなんて、もう思わない。

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