センパイの嘘つき
「私、先輩のことが、好きです」
ずっと言えなかった気持ち。
恐怖症を理由にして、人と向き合うのを避けてた。
…本当は、恐怖症になる前から、多分ずっと。
中学のこと、私を好きといってくれた彼を守りたい、なんて本当は思ってなかった。自分も被害にあうかもしれないと思うと怖くて、私は慰めるフリをしていつも見てるだけだった。
裏切られたなんて、嘘だ。裏切ってたのは、私だった。
そんな私に、先輩はぶつかってきた。
強引で、ふざけてて、だけどすごく優しくて。
自分の苦しい姿なんて、これっぽっちも見せないで。
「…俺は、アイツみたいに優しくない」
「嘘、優しいです。優しくないフリしてるだけ」
私にひどいこと言ったのは、巻き込まないため。不器用なりの優しさなんだって、今は分かる。
「…俺は、多分傷つけるよ、お前のこと。酷いこと言うし、女遊びも、多分やめられない」
「それなら、私がずっとつきまとって、そんなことさせないようにします。みっともなくても、泣いて喚いて、相手の人に諦めてもらいます」
「っ…俺はそんなお前に、ウザいとか、ついてくんなとか、そんなことばっかり言うと思う」
「それでも私は好きって言い続けます」
先輩は、何か言おうとして、でも諦めたかのように髪の毛をぐしゃぐしゃとかき回した。
「…はあ。お前には参ったよ」
そっと、先輩の手が私の頬に触れる。
驚くくらい優しくて、勘違いしそうになるくらい、大切そうに。
「…先輩?」
「…怖い。お前のこともっと好きになって、歯止めが効かなくなって、傷つけるのが」
「…私は、怖くないです」
胸が、熱い。一生、この時が続けばいいのに。
「…柚月」
先輩の真剣な目に、射抜かれる。