センパイの嘘つき
「…最後に、キスがしたい」
先輩の瞳が揺れる。それがあまりにもキレイで、目が離せない。
先輩の決意が、伝わってくる。
「…はい」
先輩との距離が、ゆっくり縮まる。
私はそっと目を閉じた。
「ありがとう、お前に出会えてよかった」
柔らかい感触を唇に感じて、次の瞬間強い力で抱きしめられた。
「せん、ぱい…」
頬が熱い。いろんな感情がごちゃまぜになって目から溢れ出す。
「ごめん、柚月ちゃん。怖いよね、でも今だけ…」
「怖くない」
私は腕を先輩の背中にまわす。
これっぽちも、怖くない。