センパイの嘘つき


「っ先輩、ずるいよお…あんな風に一方的に自分だけ言って、そのままなんて」


先輩は、いつも私の先を行く。


「私だって、話したいことたくさんあるのに、聞いて欲しいことたくさんあるのに…」


「うん、ごめん、ごめんね」


何度も確かめるように抱き寄せられる。それでも足りなくて、何度も何度も腕に力を込める。


「先輩、嘘つきじゃんっ…嘘ばっかじゃん…!」


「そう言う柚月ちゃんだって、好きでもないのに付き合おうなんて、傷つくなあ」


「あれはっ…必死で…それに、今はもう、嘘じゃないし…」


「え?聞こえない、ちゃんと言ってくれなきゃ」


そっと体を離され、見つめられる。


「さっ、さっき言った!」


「俺は聞いてない」


「…いじわる」


「いじわるな俺も、好きなんでしょ?」


「バカ!」

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