センパイの嘘つき
「あれ、一緒に帰らないの?」
「里美ちゃん!」
「あははー!ごめんごめん」
私は里美ちゃんにバレないように、まだ少し熱い頬に手を当てる。
「でもほんと、珍しいね」
「何が?」
ふてくされる私に、里美ちゃんは少し嬉しそうに笑って、言った。
「柚月が男の子とあの距離で話すなんて」
言われて、気づく。
最初は震えていたはずの体も、もう震えていない。鳥肌も、たたなかった。
でも、それは多分、
「…だから」
「え?」
「違う世界の人だから。先輩と、私は」
人気者の先輩と、人と関わるのが嫌いな私。
私たちは、交わらない。
チクリ、とまた胸が痛んだ気がした。