センパイの嘘つき
「柚月…?」
咲が、不思議そうな目でこちらを見ている。
頭に浮かぶ、白と紫の花。
雑に引き抜かれた、茎のあと。
『花は、嫌い?』
私はすぐにメールを削除して、ブロック設定をする。
大丈夫、大丈夫、落ち着け________
ドクドク、と心臓が脈打っている。
「柚月…?大丈夫?」
声にハッとして前を向く。
咲が不安そうな顔をして、私を見ている。
「あ、うん、ごめん!ちょっと、お腹痛くて」
愛想笑いを顔に貼り付ける。
「なんかあるなら、ちゃんと言ってよ?」
「なんもないって」
言えるわけない。
咲に心配かけたくないし、怖い思いなんて絶対させたくない。
大丈夫、こんなの、ただのイタズラだ。
無視してれば、すぐにおさまる。