センパイの嘘つき


「君、保健委員?」


「そうです」


声が、硬い。心臓が嫌な音を立てて鳴っている。


「じゃあ、手当てしてくれる?」


彼の白くて細長い指が、赤くなっている頬を軽く叩いた。


「…そこに座って、あと名前書いてください」


私は本を閉じて、冷蔵庫に向かう。


冷やしてあった氷のうを出して、先輩の横まで行く。


記入ノートに丁寧な文字で書かれた「柳 悠人」という名前に、そうだ、と思い出す。


クラスの子が、「柳先輩」について語っていたけど、この人だったのか。

< 3 / 181 >

この作品をシェア

pagetop