センパイの嘘つき
「君、保健委員?」
「そうです」
声が、硬い。心臓が嫌な音を立てて鳴っている。
「じゃあ、手当てしてくれる?」
彼の白くて細長い指が、赤くなっている頬を軽く叩いた。
「…そこに座って、あと名前書いてください」
私は本を閉じて、冷蔵庫に向かう。
冷やしてあった氷のうを出して、先輩の横まで行く。
記入ノートに丁寧な文字で書かれた「柳 悠人」という名前に、そうだ、と思い出す。
クラスの子が、「柳先輩」について語っていたけど、この人だったのか。