センパイの嘘つき
放課後、バイトがあるという咲と別れて私は保健室に向かった。
あのメールを見てから、ずっと落ち着かない。
ずっと、誰かに見られている気がして、得体の知れない恐怖に怯えている。
シン、とした廊下をいつもより早足で歩き、保健室に入る。
「…早いですね、先輩」
ニコニコと嬉しそうな柳先輩に、私は嫌味を込めて言う。
一昨日と同じ場所にしれっと座る柳先輩は、既に保健室に馴染んでいた。
本当に、いつまでこうして通うつもりだろう。
毎日こうだと考えると気が重い。
でも、今はそんなことよりもホッとしている自分がいる。
先輩のことは好きじゃない。というか苦手だ。
ただ、一個しか違わないとはいえども、やっぱり年上だ。
側にいるだけで、少しだけ、安心する。
「なに、そんなに見つめて。惚れた?」
ほんとに、少しだけ。