センパイの嘘つき
私は自分にできる最大限の嫌な顔をして、先輩の前に座る。
「あれ、今日はやけに素直だね」
「…どうせ先輩がここにくるなら、男の人に慣れるチャンスかなって思っただけです」
いくら先輩でも、男の人はやっぱり苦手だ。
こうして机を挟んでいる今でも、全身が緊張している。
でも。
いつも余裕そうな先輩の、初めて見た恥ずかしそうな顔。
久しぶりに感じた、恥ずかしさでドキドキした感覚。
ふと、思った。
もしあんなことがなかったら、私は今、どうなってたんだろう、なんて。
もっとたくさんの人と喋って、笑って、恋をして。
そんな私の人生は、きっと今の何倍も、何百倍も輝いていたのかな。