センパイの嘘つき


近づいてくる彼に向かって、私は必死に首を横に振る。


「どうしたの?ほら、行こう?」


伸びてくる手に、腕を掴まれる。


全身にぞわぞわと鳥肌が立つ。


知らない、男の人の匂いが鼻をついて、吐きそうになる。


耳に蘇る、下品な笑い声。


痣ができるほどに強く掴まれた腕の痛み。


「…やだ」


もうあんな目にあいたくない。

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