センパイの嘘つき


先輩と並んで歩く、放課後。


不思議だ。こんな日が来るなんて。


グラウンドではサッカー部が練習をしていて、先輩は何人かに声をかけられていた。


男子からも人気なんだ。


私は先輩の友達が発する声にまでビクビクしてしまって、本当に自分が嫌になる。


「柚月ちゃん、はい」


そんな私に先輩は優しい笑顔で飴を渡してくれた。


袋を開けて口に入れると、ぶどうの匂いが鼻を抜ける。


美味しい。


「先輩、飴持ち歩いてるなんて女の子みたいですね」


「柚月ちゃんが、喜ぶかなって」


先輩の綺麗な横顔に、少しだけドキッとする。


今のは、ずるいと思う。

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