センパイの嘘つき
「…わたしの、ためなんですか?」
「そうだよ?」
さらっとそう言ってのける先輩に、私は胸がぎゅっと締め付けられる。
なんで。
どうしてそこまでしてくれるの?
「先輩は、なんで私なんかにかまうんですか?」
自分が出した声が予想以上に頼りなくて、言ってて自分で泣きそうになる。
「…さっきだって、助けに来てくれた先輩の手を叩きました。先輩の、望むようなこと私はなにもできません。」
私は、先輩に触れることすらできない。
怯えてばかり。強がって、ばかり。
「先輩のまわりにいる女の子みたいにかわいくないし、面白い話ができるわけでもないし、先輩のこと、きっと傷つける」
今までも、そうだった。
一時期は女の子でも急に触られると驚いてしまって、ひどい態度をとってしまったこともある。
そのときの、相手の傷ついた顔が、私は忘れられない。
もう、誰にもあんな顔させたくないっ…
「だから、もう私なんかに____」
「近くにいたいって、思うんだ」
「…え?」
「怖がられても、冷たくされても、触れなくても。それでも、柚月ちゃんのこと、嫌いになれない」