センパイの嘘つき
電車の中は、空いていた。
私は空いている席に腰掛ける。
1つ空けて、先輩も席に腰かけた。
「…先輩、どこで降りるんですか?」
「んー?どこだろうね」
先輩に読めない笑顔を向けられ、なんとなくイラっとする。
先輩は、いつも優しくて、前向きだ。
何かに絶望することは、ないのかな。
電車に揺られ、私の降りる駅名がアナウンスされた。
「じゃあ、私ここなんで。さようなら」
私は立ち上がって先輩の方を向く。
先輩も、なぜか立ち上がっていた。
「…え?」
「奇遇だね、俺もここなんだよね」
また、読めない笑顔。
でもわかる。
それはさすがにないだろ。